超レ欲ス
……いや、本当は本が面白いか云々なんてのは二の次で。
真にいいたいことはこっちだ。
彼女が貸してくれる本には統一性がなく、そしていつも読者が共感できない内容ばかりである、ということ。
どの本を読んでも、それを通して彼女が見えてこないのだ。
普通、個人が読む本には嗜好がある。
「こういう本が好き」というカテゴリーというのか。
それが、彼女にはないのである。
いろんな本が好き、といってしまえばそれまでなのだが、それにしたって他人に勧める本にしては、選び方が不定形過ぎると思った。
うーん。そうだ。
それは例えば、香田がいらないものを俺に押し付けてくれるのと、感覚として似ていた。
飽きた、自分には合わなかった、あるいはつまらなかったゲームや遊び。
それを俺に「いらねえからやるよ」と言ってくれるのとそっくりだった。
俺に勧めるために選んでいるのではなく、最近読んだ、あるいは本棚からか、その辺にあったものを適当に選んでいるように感じられたのである。
しかしそれならば変なところがあった。
彼女が選んだ本を読んだ俺の感想を凄く楽しそうに、嬉しそうに聞いてくれることだ。
感想を聞くのが嬉しい、ということはやはり適当に選んでいるわけではないらしい。
でも、それにしては選び方がすごくいびつというか、わかりにくい。
面白くもなく首をひねるような小説を読み、そしてそれをさも面白かったかのようにポイントをおさえて彼女の前で褒めちぎってみせる。
その作業ってのはすごく疲れるし、すごく罪悪感がつのった。
それで、通算九冊目の本を返しに昼休みB組へ行った日。
とうとう耐えきれなくなり、思い切って訊いてしまった。