超レ欲ス

10


「今回はなに?」

教室に帰り、自分の席に着くなり隣から訊いてきたのは、浜野拓也だ。

俺は本のタイトルが見えるよう、浜野の方へ今借りてきたばかりのそれの表紙を向けてやる。

「へえ。『シラフのヒト』?これはおれ、読んだことないな。やっぱりおれより熱心だね、そのコ」

なんに熱心なのかとかつっこむべきだったのかもしれないが、とてもそんな気分になれなかったので、気になっていた別の話題に持っていく。

「ねえ、浜野。志田どこ行ったか知らない?」

「え。B組じゃないの?」

「いや、いなかった」

「志田くんがどうかした?」

「いや、いいの。知らないんなら」

俺はそう言って、浜野の方へ向けていた本を鞄にしまい、再び立ち上がった。

「どうしたの?」

「ん、なんでもない。ちょっと……」

そのまま俺は教室を出た。

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