溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
「言っておくけど、俺の佐野への想いはそんな生半可なものじゃないから。……それに知らないなら、これから知っていけばいい」

「えっ……?」

彼は瞼に残った雫を掬い、眩しい笑顔を見せた。
「佐野のこと、もっと知りたいし佐野にも俺のことを知ってほしい。……昔の俺じゃなくて今の俺を見て知って、好きになってほしいんだ」

「佐々木君……」

ない、それ。不意打ちの笑顔でそんなことを言うなんてズルイ。

「些細なことでもいい、佐野のことならなんでも知りたい。それにどんな佐野でも、嫌いになるとは思えないし、むしろもっと好きになる自信がある。……だから俺に教えてよ、佐野のことを全部」

甘い言葉を囁きながら、そっと抱き寄せられた身体。

少しだけ隙間を作り、躊躇いがちに大きな手が私の背中を優しく撫でていく。

その瞬間、鼻を掠めたのは消毒液の匂い。だけど次第に彼の大きな手が何度も背中を行き来し、温かな気持ちで満たされていく。

私……ずっと十年後の約束は、今も有効なのかどうかばかり考えていた。

実際に佐々木君にもう一度『好き』って言われたらどうするつもりだったんだろう。
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