溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
それもまた、佐々木君が約束を忘れていると思った要因のひとつだった。連絡先も知らない状態で、どうやって想いを伝えて来てくれるんだろうって。

だから聞いたんだけど……佐々木君からの返事がない。もしかしてこれは連絡先を聞いたらまずかったのかな。

「……どう、かな?」

不安になり恐る恐る聞くと、彼は瞬きをせずにジッと私を見つめたまま。

「佐々木君?」

名前を呼ぶと今度は思いっきり抱きしめられてしまった。

「きゃっ!?」

先ほどとは比べものにならないほど彼のぬくもりを感じ、驚くほど心臓がバクバクいっている。

「さ、佐々木君!?」

ドキドキしているのを知られるのが恥ずかしくて離れようとしたものの、彼は私の背中をきつく抱きしめて離してくれない。

その間も私の心臓は早く脈打ったまま。

少しすると佐々木君は吐息交じりに囁いた。

「夢みたいだ」

「……えっ?」

ドキドキしすぎて掠れた声が漏れる。ゆっくりと離されていく身体。そして向けられたのは、目を見張るほど惚れ惚れしれしまう笑顔だった。
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