溺愛診察室～一途な外科医に甘く迫られています～

「あ、もしもし。おばあちゃん？」

電話に出たのは一緒に暮らしているおばあちゃんだと思ったんだけれど……。

『環奈ちゃん？　よかった、今連絡しようと思ったのよ！』

電話に出たのはおばあちゃんではなく、隣の家に住むおばさんだった。

「え、おばさん？　どうしてうちに……？」

足を止め戸惑う私に、おばさんは耳を疑うようなことを言われ愕然となる。

けれどすぐに駆け出し、タクシーを止めてある場所へと急いだ。

「すみません、ありがとうございました」

支払いを済ませ、タクシーから降りた私の前にそびえ立つのは、都内でも有名な【佐々木総合病院】。

そこは私がずっと避けてきた場所でもある。……だって彼の実家であり、勤め先でもあるから。

けれど今はそんなことを言っている場合じゃない。

玄関口へ向かいながら電話でおばさんに聞いた話を思い出す。

『弘子さん、今さっき救急車で運ばれたのよ！』

信じられなかった。だっておばあちゃん、今朝は元気で笑顔で送り出してくれたのに。