溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
藁にもすがる思いで聞いたものの、なぜか佐々木君は途中で足を止めた。

「佐々木君?」

私も足を止めて振り返ると、なぜか彼は不満げな表情。

どうしたんだろう。あ、やっぱり聞いたらまずかった? でもよく考えればお医者さんって忙しいし、気軽に雑誌に掲載できるような職業じゃないもの。軽はずみだったかもしれない。

薫ちゃんには申し訳ないけれど、ドクターではない職種のイケメンに変更した方がいいかも。そんな考えが頭をよぎった時、佐々木君は思いもよらぬことを口にした。

「どうして俺に聞いてくれないわけ?」

「――えっ。どうしてって……」

だって迷惑かなと思ったから。

なのに佐々木君はそっぽ向いた。

「言っただろ? 佐野が担当する記事は毎月読んでいるって。……だからいつも思っていたんだ。いつか佐野が取材を申し込みにきてくれたら……って」

チラッと私を見た彼は、まるで拗ねた子供みたいな顔をしていて、胸を鷲掴みにされてしまった。

「ドクターでいいなら、俺じゃ力不足かもしれないけど、協力させてよ」

「そんな力不足だなんて……っ」
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