溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
むしろ佐々木君を掲載したら、記事を見た読者はみんな佐々木君目当てに病院へ押し寄せそう。

――あ、そっか。……私、それが嫌なんだ。薫ちゃんに会わせたくないのも、佐々木君を記事にしたくないのも、誰かが彼に好意を寄せるのが、面白くないからなんだ。

でもあれ。これってつまりヤキモチ……だよね?

いや、ヤキモチっていうのは好きな相手に妬くものであって、じゃあ私は佐々木君のことを……?

そこまで考えが行きつくと、尋常じゃないほど心臓が暴れ出す。

嘘、そんなっ……! だってまだ再会して間もないし、私は大人になった佐々木君のことを、それほど多くは知っていない。

それなのにどうしてヤキモチを? 告白されて意識しているから? でも私と佐々木君は付き合っているわけでも、ましてや私は返事を曖昧にしたままだというのに。

子供みたいな感情に嫌気がさす。

「佐野……?」

なにも言わない私の様子を窺ってきた彼に我に返り、慌てて口を開いた。

「佐々木君さえよければ、是非お願いしたいんだけど……いいかな?」

個人的な感情でお願いしないのは間違っている。佐々木君ならみんなも編集長もオッケーを出してくれると思うし。
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