溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
しばらくは私が家事を請け負うと伝えていたのに、家に帰るとおばあちゃんは、食事の準備をしてくれていた。

でも久しぶりに食べるおばあちゃんの料理はどれも美味しくて、食べ進めるほどにジンとなる。

そんな私の横で彩音は無邪気に言う。

「うわぁ、この煮物美味しい! おばあちゃん、北海道に帰るまでにレシピ教えてください!」

「あら嬉しいこと言ってくれるわね。もちろんよ」

「やったー!」

おばあちゃんと彩音は、お父さんが再婚する時に一度会ったきり。ほぼ初対面に等しい。

それなのにこの打ち解けよう……。

ふたりで料理について楽しそうに話していて、すっかり私は蚊帳の外状態だ。

日中、私が仕事でいない間はおばちゃんと彩音、ふたりっきりになるし、早く打ち解けることに越したことはないけれど……。

「おばあちゃん、この魚の煮つけはどうやって味付けしたの?」

煮魚を食べながら質問する彩音に、おばあちゃんは嬉しそうに答えていく。

ふたりの様子が、昔の彩音とお父さんに重なる。
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