溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
会ってすぐに彩音は『お父さん』と呼び、抱き着いた。そしてあっという間に本当の親子のような関係になっていった。

私だって別に人と話すのが苦手なわけじゃない。でも彩音のようにすぐに仲良くなることはできない。

そういうところ、羨ましく思う。

それから彩音は就職活動をしながら、積極的に家のことをしてくれて、おばあちゃんを助けてくれた。

帰宅するたびに外にまでふたりの楽しそうな笑い声が聞こえてきて、帰るのがちょっぴり憂鬱になるほどに。



彩音が家に居候し始めて早一週間。今日は街角イケメンコーナーの最終稿チェックの打ち合わせで、十時からミーティングルームで薫ちゃん、笠井君の三人でくまなくチェックしていた。

「もう環奈先輩、今日何度目の溜息ですか?」

「えっ?」

原稿に誤字や脱字がないかチェックしていると、急に薫ちゃんに言われ首を傾げてしまう。

「私、そんなに溜息ついていた?」

自覚がなくて尋ねると、薫ちゃんは深く頷いた。

「もう何度も吐いてますよ? 言っておきますけど、今日だけじゃないですからね! 最近、どこか上の空ってことが多いですし」

「ちなみに眉間の皺もすごいですよ」
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