溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
ボソッと笠井君に付けたし言われ、咄嗟に眉間を手で押さえた。

「嘘っ!?」

「本当です」
「本当です」

ふたりに息ぴったりに言われ、なにも言えなくなる。

わかっている、溜息も眉間の皺の原因も。彩音としばらく離れて暮らしていたから忘れていたけれど私……彩音にコンプレックスを抱いているんだと思う。

彼女は私にないものを持っているから。

それにヤキモチ妬いているのかも。大好きなおばあちゃんと楽しそうに話していたり、帰宅後、ふたりからその日の出来事や起こったことなどを嬉しそうに聞かされて。

私のおばあちゃんなのに……って変な独占欲が働いちゃっている。

二十八歳にもなって、なにやっているんだろう。おばあちゃんと彩音が仲良くなれて姉として喜ぶべきところなのに。

ついまた溜息を零すと、すかさず薫ちゃんが突っ込んできた。

「ほらまたー! なんですか? 環奈先輩、なにか悩み事でもあるんですか? 私でよかったら聞きますよ」

「ありがとう薫ちゃん。大丈夫、大したことじゃないの」

笑って平気なアピールをするものの、内心情けない気持ちでいっぱいになる。
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