溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
仕事中に後輩にまで心配されて、私ってばなにをやっているんだろう。しっかり家族と向き合うって決めたじゃない。

それなのに彩音とはまだうまく話せないまま。おばあちゃんがいるから会話が持っているだけだ。

「本当ですか? あまり無理しないでくださいね。……あ、私珈琲淹れてきます! 美味しい珈琲淹れてくるんで、元気だしてください!」

そう言うと薫ちゃんは立ち上がり、意気揚々と給湯室へと向かっていった。

パタンとドアが閉まりふたりっきりになると、笠井君は私の様子を窺いながら聞いてきた。

「佐々木さんとなにかあったんですか?」

「えっ!?」

「いや、悩みって言ったら恋愛のことかと思いまして」

「ち、違うの! そうじゃないの」

あぁ、笠井君にまで余計な心配をかけてしまって申し訳ない。

「そうなんですか? だったら深く聞きませんが……。あまり無理しないでくださいね。あいつもずっと心配していましたよ。佐野先輩の元気がないって」

「……そっか」

薫ちゃん、さっきもすごく気遣ってくれていたものね。ますます申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
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