溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
「大丈夫だよ、岡本さんの症状は命にかかわるものじゃない。しっかり治療すれば元気になられるよ」

「……そっか、よかった」

彼の話を聞き、やっとホッとすることができた。

おばさんからおばあちゃんが腹痛で血を吐き、救急車で運ばれたと聞いた時は生きた心地がしなかったから。

「今は眠っているけれど、目を覚ましたら面会もできるから。……あ、でもその前に入院に必要なものを持ってきてもらった方がいいかな」

そう言うと佐々木君は看護師を呼び、入院に関する案内書を私に渡してくれた。

「これに必要なものや面会時間などが書かれているから」

「ありがとう」

受け取り目を通す。

「あのさ、今度は俺が聞いてもいいかな?」

声を掛けられ顔を上げると、彼は探るような目を私に向けられていて、ドキッとしてしまう。

佐々木君が私に聞きたいことってなんだろう。……もしかして十年前の約束のこと? 「覚えている?」って聞かれるのかな。

そう思うと妙な緊張感に襲われる。
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