溺愛診察室～一途な外科医に甘く迫られています～

これはなんて答えるのが正解なんだろう。返答に困っているとすかさず佐々木君がアシストしてくれた。

「佐野、正直に言っていいから」

正直に……。その言葉に勇気をもらい、素直な思いを伝えた。

「さっきは笑ってしまいましたけど、正直羨ましく思います」

「え、羨ましい？」

私の答えにお母さんたちは顔を見合わせた。

「はい。……母は私が中学生の時に亡くなりまして。その後、父は再婚したのですが、私だけ家族に馴染めなくて。こんな風に大勢で食事を取るのは久しぶりなんです」

お母さんが病気になるまでは、うちもいつも食事中は笑いが絶えなかった。お父さんとお母さんは、喧嘩をするほど仲が良いって言葉がぴったりなふたりだった。

だから小さなことでよく言い合いをしていた。……さっきの佐々木君のお父さんたちのように。

「まぁ、そうだったの。じゃあ環奈ちゃんは今はひとりで暮らしているの？」

「あ、いいえ。父の転勤で家族は北海道に引っ越しまして。私は母方の祖母の家でふたりで暮らしています。祖母にはとてもよくしてもらっているのですが、いつもふたりっきりだったので、こんなに賑やかな食卓は楽しいです」