溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
「佐野は妹さんと喧嘩したことないの?」

「うん、ないかな。七つも歳が離れているし。……今回が初めてかも」

「そっか。どんなことで喧嘩したの?」

さり気なく聞いてきた佐々木君に、思わず本当のことを漏らしてしまった。

「それは彩音が佐々木君のことを、嬉しそうに話していたから面白くなくて」

「――え」

途端に佐々木君は目を丸くさせ、私を凝視してくる。

「あっ……違うの!」

すぐに我に返り両手を顔の前で左右に振り、必死に否定をする。

やだ、私ってばなにを素直に話しちゃったのよ。

「ごめん、今の忘れて」

恥ずかしくなり彼とは反対方向に身体の向きを変える。けれどすぐに肩を掴まれ、彼と向き合わされてしまった。

真剣な瞳を向けられ、息を飲む。

「無理、忘れられないよ。……ちゃんと教えて」

ちゃんと教えてって……言えないよ、そんなの。

かぁっと身体中が熱くなる。

でも佐々木君は私の肩を掴んだまま、離してくれない。話すのを待っている。

本当はこのまま逃げだしたい。けれど頭をよぎったのは、砂羽と笠井君の言葉。

それに自分の気持ちに気づいた今、どんなに誤魔化しても誤魔化しきれないよ。だって私は、佐々木君のことが好きだから。
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