溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
片眉を上げてお父さんを指差すお母さんの元に、お父さんは急いで駆け寄った。

「灯里っ……! お前、真太郎の前でそんなこと言うな! 父親の威厳がなくなるだろう!」

お父さんは声を潜めて言っているけれど声は筒抜け。すると佐々木君は鼻で笑った。

「なんだ、父さんも人のこといえないじゃん。むしろ俺よりタチが悪くないですか?」

「うるさい。……と、とにかくだ! 部屋でふたりっきりはもう終わり! リビングに来なさい」

話を無理やり終わらせると、お父さんは私に尋ねてきた。

「環奈ちゃん、今夜はどうする? 家なら泊まってくれてもいいけど」

「あっ……」

そのまま佐々木君を見ると、私の気持ちはわかっていると言うように頷いた。

最初はあんなに帰りたくなかったのに、今は不思議とその気持ちがない。むしろ早く彩音と会って早く話がしたい。
ソファから立ち上がり、お父さんたちに向かって頭を下げた。

「あの、今日は帰ります。遅くまでお邪魔してしまい、すみませんでした」

顔を上げるとふたりは微笑んだ。

「そうか、それは残念」
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