溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
どうして彩音が謝るの? 悪いのは私なのに。

それなのに彩音は自分が悪いと思っていて、ギューッとしがみついてきた。

「謝らないで。だって悪いのは私でしょ? ……さっきはごめんね」

すると彩音は顔を上げ、真っ赤に染まった目で私を見つめてきた。

「え……お姉ちゃん、怒っていないの?」

目を瞬かせる彼女を安心させるように、笑顔で言った。

「怒っていないよ。むしろ彩音が怒るべきじゃない? だって私が急に家を飛び出したわけだし」

「それは私が、勝手にお姉ちゃんと佐々木先生お似合い! って盛り上がってくっ付けるために、出掛けようって言ったからじゃないの?」

佐々木君の言う通りだ。彩音は私のためを思って三人で出掛けようって言ってくれたんだ。

「違うよ」

すぐに否定し、佐々木君のことが好きだと伝えようとしたものの、恋バナすることなんて初めてだし躊躇する。

それにここは玄関先。おばあちゃんが起きちゃうかもしれない。

「彩音、まだ寝なくても大丈夫だったら、私の部屋で話をしない?」

声を潜めて言うと、彩音は「する!!」と言いながら何度も首を縦に振った。その姿が可愛くて口もとが緩む。

「じゃあ先に行ってて。珈琲淹れてくるから」

「ありがとう」

そう言うと彩音はスキップしながら私の部屋へと向かっていく。その後ろ姿に和みながら台所へ向かい、珈琲をカップふたつに注ぎ部屋へと向かった。
< 202 / 279 >

この作品をシェア

pagetop