溺愛診察室～一途な外科医に甘く迫られています～

「ふたりとも私とお姉ちゃんのためを思って再婚したんだよ。もちろん好きって感情もあったと思う。……でもそれ以上に、片親しかいない私たちに家族を作ってあげたいって思ったんだって」

そんな、まさか。だってお父さん、そんなこと一言も言っていなかったのに。

私はずっと、亡くなったお母さんのことを忘れてあっさり再婚したんだとばかり思っていた。

まさか私のためだったなんて――。

初めて知るお父さんの想いに、涙が零れそうになる。

「うちのお母さんもね、お姉ちゃんの気持ちをいつも汲んでいたよ。お姉ちゃんと同じ境遇になったら、すぐには受け入れられないからって。……今もずっといつかお姉ちゃんに“お母さん”として認めてもらえるのを待っている」

彩音の話に、堪え切れず涙が零れ落ちた。

私……今まで本当にずっとなにをやっていたんだろう。どうしてもっと早く、みんなと向き合おうとしなかったんだろう。

逃げてばかりいた日々が悔やまれる。

「もう、お姉ちゃんてば泣かないでよー」

彩音にティッシュの箱を渡され、数枚取って涙を拭った。

「だって彩音が泣かせるようなことを言うから……」