溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
それにつられるように、初めてふたりの口から私と彩音への想いを聞き、泣いてしまった。

「なんかおかしいね、親子そろって泣くとか」

「そうだな」

涙も落ち着いてきた頃、今度は可笑しくなって笑ってしまう。

「それにしてもお父さん、どうして再婚する時にちゃんと言ってくれなかったの? 言ってくれたら私、こんなにずっと悩まずに済んだのに」

昔のようにお父さんに対して怒りながら言うと、お父さんはタジタジになる。

「いや、それはすべて環奈のためを思ってだな……!」

「だったらなおさら言ってほしかった。……そうすれば私、もっと早くみんなと本当の家族になれていたのに」

唇を尖らせながら言うと、ふたりは信じられないと言うように顔を見合わせた。

「ほ、本当だからね! ……昔、ふたりの気持ちを知っていたら、あんなに可愛げない態度をとらなかったと思う」

「環奈……」

そりゃ最初は反発したかもしれない。「私にとってお母さんは、たったひとりしかいない」って。

でも聞いていたら、少しずつでも歩み寄ろうとしていたと思う。だって今の私がそうだから。
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