溺愛診察室～一途な外科医に甘く迫られています～

「ねぇ、お父さん。……お母さん。今年のお盆とお正月は帰るから、ご馳走用意して待っていてくれる？」

すぐには本当の家族みたいになるのは無理だと思う。でも少しずつでもいい、彩音やお父さん、お義母さんと本物の家族になっていきたい。

けれどやっぱり素直に言えない私は、さっきので精いっぱい。それでも私の気持ちはふたりに伝わったようで、また泣き出してしまった。

「あぁ、食べきれないほど美味しい物をご馳走して待っているから、いつでも帰ってこい！」

「環奈ちゃん、北海道の食べ物って本当に美味しいのよ。……環奈ちゃんの家なんだから、いつでも帰ってきてね」

ふたりに優しい言葉を掛けられ、私までまた泣いてしまいそうになり、奥歯をギュッと噛みしめた。

「はい、ありがとうございます！」

だいぶ遅くなってしまったけれど、きっとこれから本当の家族になれるよね。……ううん、なるんだ。

きっとそれが亡くなったお母さんの願いでもあると思いたい。