溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
「お姉ちゃん」

「ん?」

すると最後に彩音は、お父さんとお義母さんに聞こえないよう耳打ちしてきた。

「佐々木先生とうまくいったら、一番に教えてね! 楽しみにしているから」

「……うん」

「本当? 約束だよ」

笑顔でそう言うと、彩音たちは搭乗ゲートへと消えていった。

「行っちゃった……」

外で三人が乗った飛行機を見送った後、空を見つめながらポツリと漏れた声。

楽しい時間を過ごせたからこそ、寂しくなる。でも家に帰ればおばあちゃんがいるもの。

それにこれからは、帰りたくなったらいつでも帰ればいい。そうやって距離を縮めてけばいいよね。

彩音とも今度、札幌で一緒に遊ぶ約束をしちゃったし。

最後に彩音と交わした言葉を思い出す。

私、頑張ったよね? これまでの私より少しは強くなれたよね?

バッグから取り出したのはスマホ。一度勇気を出すことができたんだもの、佐々木君に対してだって勇気を出せるはず。

今度こそちゃんと好きって伝えられるはず。

思い切って自分からメッセージを送った。【今度、ふたりでどこかに出掛けませんか?】って。
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