溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
いやいや、行っちゃったってなに? 当たり前じゃない、佐々木君はお医者さんで忙しいんだから。

気持ちを切り替えて緊急外来を後にする。

入院することになっちゃったけれど、命にかかわる病気ではなくて本当によかった。

それにたまたま担当してくれるのが佐々木君でよかった。

わからないことがあったら聞きやすいし、それに――……。

病院を後にし、タクシーに乗りたくて大通りに出たところで足が止まる。

それに……私もこのタイミングで佐々木君と会うことができて嬉しい。

十年間、ずっとずっと忘れられず、今の時期が訪れるたびに思い出していた。佐々木君はあの日の約束を覚えているかなって。

来月は約束の十年目。……今度、聞いてみてもいいかな? 「佐々木君はあの日の約束を覚えている?」って。

だってずっと気になっていたんだもの。……聞いてもいいよね。

おばあちゃんが入院中、どうにかして佐々木君に聞いてみようと心に決め、タクシーを止め自宅へと急いだ。
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