溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
わかってはいるけれど、佐々木君はお医者さんなんだって実感させられていく。動じずに素早く対応し、人の命を救っちゃう人なんだ。

さっきの佐々木君、本当にカッコよかった。

私と同じように静観していた人からは拍手と歓声が起こる。私も一緒になって佐々木君に拍手を送った。

ちょうど電話を終えた佐々木君は恥ずかしそうに小さく一礼し、人混みの中で私を見つけると、慌てた様子で駆け寄ってきた。

「佐野、ごめん。うちの病院に搬送してもらおうと思って電話したら、ちょうど急患が入ったようで戻らないといけなくなった。このままあの男性について病院に戻るな。……ごめんな、途中で」

申し訳なさそうに謝る佐々木君に、すぐさま首を左右に振る。

「ううん、気にしないで。……それより大丈夫? 休みなのに」

ましてや今日、一日付き合わせてしまった。

「大丈夫、楽しかったから仕事頑張れるよ。……また連絡するから」

「うん、頑張って」

救急隊員に「お願いします」と呼ばれ、佐々木君は足早に去っていく。

そして彼を乗せた救急車はサイレンを鳴らして走り去っていった。

「行っちゃった……」
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