溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
でもあの男性が助かってよかった。それに告白なら、今度またすればいいよね。

そう自分に言い聞かせ、最寄り駅に向かうものの足取りは重くなる。

本当は今日、好きって伝えたかった。今度って言ってもいつになるのかな。今日だってやっと会えたのに。

私は基本、土日が休みだけれど佐々木君はそうはいかない。不規則だし、なにより今みたいに急患が入ったとなれば呼ばれることもあるって言っていたから。

だから今日、言いたかったのにな。

もしかしてこのままずっと、佐々木君に気持ちを伝えられないってことはないよね? この前だってお父さんに邪魔されちゃったし……。あり得そうで怖くなる。

不安に襲われながらも最寄り駅に着き、改札口を抜けようとした時、懐かしい声が私の名前を読んだ。「……もしかして、佐野か?」って。


「いやー、本当にびっくりした。どことなく似ているなとは思ったが、まさか本当に佐野だとは」

騒がしい店内で陽気な声で言う人物を目の前にしても、いまだに信じられないでいる。
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