溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
「それは私のセリフです。……まさか先生に会うなんて夢にも思いませんでした」

駅で私に声を掛けてきたのは、十年ぶりに会う初恋の人、先生だった。

「でも偶然会えて嬉しいよ。こうして教え子と会って酒を飲むのが夢だったんだ」

先生は昔より多く目尻に皺を刻んで笑う。

十年経ってもっと先生は大人の男性になっていた。でも目尻に皺をいっぱい作って笑う笑顔だけは変わらないね。

先生とやって来たのは駅中にある居酒屋。ビールをふたつとおつまみを注文し、早速乾杯した。

「最高だな、教え子と飲むビールは」

「もう、先生オヤジみたいですよ」

ビールを飲む姿に笑ってしまう。

「オヤジだろう、じゃなくてもう立派なオヤジだよ。俺もそろそろ四十歳になるんだから」

そっか、先生もう四十歳になるんだ。そういえば私が先生と出会った頃、先生は二十八歳だった。……今の私と同い年なんだ。

そう思うと感慨深い。きっと先生にとって私はただの生徒でしかなかったんだろうな。

だって今の私が男子高校生相手に恋愛感情を抱けるかって聞かれたら、無理だもの。子供にしか思えないから。
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