溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
「ちょうど今、奥さんと子供里帰り中でな。ひとり寂しく食事しようと思っていたから、偶然佐野に会えて本当によかったよ」

「えぇー、なんですかそれ。偶然いたからみたいな言い方は」

懐かしいな、この感じ。先生は誰に対してもフランクですごく話しやすかった。だからこそ好きになったんだと思う。

昔好きだった人の幸せそうな姿を見たら、どう思うんだろうって思っていたけれど、意外と平気なんだね。

むしろ先生が幸せそうに奥さんや子供の話をすると、私まで嬉しくなるから不思議だ。

昔話に花を咲かせていると、ふと先生が尋ねてきた。

「佐野、ご家族とはどうなんだ? あれからうまくいっているのか?」

神妙な面持ちで私を見る先生は、昔からなにも変わっていない。いつもこうして気に掛けてくれていたよね。

昔から心配かけてきた先生を安心させるように、笑顔で伝えた。

「はい、おかげさまで。……と言っても、やっと最近なんです。……ある人のおかげで家族と向き合うことができました。今は距離を頑張って縮めているところです」

私が家族と向き合う勇気を出せたのは、佐々木君のおかげ。
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