溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
遠くから聞こえてきた叫ぶような声に思わず立ち上がる。そして周囲を見回していると、灯りの先に彼の姿を捕らえた。

「佐々木君!」

気づいたら勝手に佐々木君に向かって走り出していた。早く会いたい、伝えたい一心で。

小高い丘がある芝生の前でお互い足を止め、見つめ合う。

佐々木君は白衣を身に纏ったままで、走ってきてくれたのか髪は乱れ呼吸も荒い。

「佐々木君……」

街で別れて間もないのに、なぜだろうか。会えただけで涙が溢れそうになるのは。

すぐに好きって伝えようとしたけれど、先手を打たれてしまった。

「なにやっているんだよ、こんな時間に夜の公園でひとりでいるなんて。危ないだろ!? 俺がメッセージに気づかなかったら、どうするんだ?」

いつになく声を荒げる彼に肩がすくむ。

けれど佐々木君は心配して怒ってくれているんだってすぐに理解でき、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

「ごめんなさい。でもどうしても佐々木君に会いたかったの」

「だったら連絡してくれ。そうしたら俺から会いに行くから。……佐野になにかあったらどうしようと、気が気じゃなかった」
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