溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
切羽詰った顔で言うと、彼は私の腕を引き抱きしめた。

そして私の存在を確かめるように大きな手が背中を行き来していく。

「もし公園にいなかったら、どうしようかと思ったよ。……よかった、なにもなくて」

「佐々木君……」

更に強い力で抱きしめられ、胸が締めつけられていく。

白衣についた消毒液の匂いが鼻を掠め、ツンとなる。でもそれは涙が出そうだからか、消毒液の匂いを嗅いでなのかわからなくなる。

胸がいっぱいで、ただもっと佐々木君のぬくもりを身体中で感じたくて、彼の広い背中に腕を伸ばした。

「ごめん。……だけどやっぱり今日、佐々木君に好きって伝えたかったの」

想いは溢れ出し、あれほどなかなか言えずにいた二文字の言葉が、いとも簡単に口から流れ出た。

「――え」

すぐさま彼は私の身体を離し、瞬きせずに凝視してくる。

「佐野……今、なんて言った?」

信じられないと言うように私を見つめる彼に、今の素直な想いを吐露した。

「佐々木君のことが好きなの。……気づくの、遅くなってごめんね」

なかなか認められずにいた想いだったから。
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