溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
また私の身体を離すと、今度は両手で私の頬をキュッと摘んだ。

「いたっ……! ひょっと佐々木ふん!?」

つねられたままの頬で言葉がうまく出ない。そんな私を見て佐々木君は嬉しそうに笑った。

「よかった、夢じゃないみたいだな」

すぐに頬を離してくれたけれど、ジロリと睨む。

「酷いじゃない、私の頬を摘んで確かめるとか」

「悪い、佐野も偽物だったらどうしようかと思ったからさ」

そう言いながら彼は私の腰に両手を回し、グッと私の身体を引き寄せた。

「だってそうだろ? 十年も片想いしていたんだ。いきなり両想いだって言われても、すぐには信じることができないよ」

佐々木君……。

そうだ、彼はずっとずっと私のことを想ってくれていた。どうやったら信じてくれる? 十年分の気持ちを埋めることができる?

必死に頭を働かせて考えて。心臓が壊れてしまうほどドキドキしながら私は思いっきり背伸びをした。

そしてそっと彼の唇にキスを落とす。一瞬だけ触れた唇に胸が苦しくなる。
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