溺愛診察室～一途な外科医に甘く迫られています～

佐々木君の記事が掲載された最新号は、大反響を呼んだ。無料で配布しているものだけれど、問い合わせが殺到して異例の重版がかかったほど。

編集長は上機嫌だ。それに比べて私はちょっぴり面白くない。

給湯室で立ったまま珈琲を飲みながら、彼が載っている記事を眺める。

写真もうまく取れているし、インタビュー内容も医者という職業についても取り上げていて、良い内容だと思う。

でもそのおかげで佐々木君はこの付近では、今やアイドル並みの人気者だ。

なんでも病院へも佐々木君見たさに、患者でもないのに通い詰めているファンもいるとか……。

記事の反響の大きさは編集者として嬉しいけれど、彼女としては面白くない。

写真の中の佐々木君に「面白くないよ！」と心の中で訴えてしまう。

「佐野先輩、眉間に皺が寄っていますよ」

「えっ!?」

咄嗟に眉間に手を当てて声のした方を見ると、珈琲を飲みにきたのは笠井君だった。

「お疲れ様です。大変ですね、彼氏が有名人になっちゃって」

「……そうね」