溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
「そう、だったのかもしれません。だから先生には昔も今も、なんでも話せちゃうのかもしれません」

「やっぱりな」

環奈は今、どんな思いでいるのだろうか。……想いを告げるチャンスだったんじゃないのか?

否定して、高校時代ずっと好きだったと。環奈は告白しなかったことを後悔していないのだろうか。このままでいいのか? 好きだった相手に自分の気持ちを伝えずで。

矛盾する思いに悩まされている中、環奈は先生と向き合った。

「でも先生と出会えたから私、幸せでした。家族と色々あって辛い思いをしたけれど、いつも先生が話を聞いてくれたので。……あ、もちろん今はなんでも話せるのは先生じゃなくて彼ですから」

最後に「えへへ」と言っておどける彼女に、胸が痛んだ。

でも環奈の笑顔や言葉は嘘を言っているように見えない。……いや、信じたいだけなのかもしれない。

環奈にとって先生は、初恋の相手となっていると。想いを伝えず、ずっと教師と生徒の関係でいたいと思っているのだと。
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