溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
これ以上見ていられなくて、歩を進めふたりの元へ向かった。

「環奈」

名前を呼ぶとすぐに振り返った環奈。

「おう、佐々木、久しぶりだな。みんなお待ちかねだぞ」

手を挙げて俺を呼ぶと、先生は手招きした。

「いやー佐々木お前、大人になってますますイケメンになったな」

「……それはどうも」

先生は昔からこんな風に生徒誰に対してもフレンドリーだった。それは今も変わらないようだ。

「早く入ろう」

「はい」

先に店に入った先生を見届けて環奈を見ると、なぜか俺の様子を窺っていた。もしかしてさっきの話を聞かれていないか、気にしているのだろうか。

「悪かったな、遅くなって。急患が入ってそのままオペだったんだ。おかげで腹空いたよ」

ポンと彼女の頭を撫でると、安心したように表情を綻ばせた。

「じゃあ真太郎のために美味しいものを用意してもらわないとね。……あ、あとごめん真太郎。みんなに私たちのこと話しちゃったんだけど、大丈夫だった?」

また環奈は不安げに瞳を揺らすものだから、彼女に顔を近づけた。
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