溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
「あぁ、ずっと見てた」

「……最悪」

そう言いながらも猫のように俺の胸に頬を摺り寄せてくる環奈が、本当に愛しい。

彼女の髪を撫でながら昨夜のことを思い出した。

「あのさ、環奈」

「ん?」

とろんとした声で答えた彼女に、唇の端を上げながら言った。

「環奈だけじゃないよ、独占欲が強いのは」

「…………えっ!?」

ワンテンポ遅れて反応すると、環奈は顔を上げて俺をまじまじと見つめてきた。

「いつも環奈をひとり占めしたいと思っているよ。……だから環奈も言ってよ。その方が俺も嬉しいから」

にっこり笑って言うと、顔を真っ赤にさせながらも彼女はコクリと頷いた。

「旅行、早く行きたいな」

もう一度ギューッと抱きしめて本音が漏れる。

こうやって幸せな時間を過ごせるのは朝だけだけど、旅行に行けば幸せな気持ちのままずっといられるのだから。

「……私も」

背中に腕を回してしがみついてきた彼女に、また俺は幸せな気持ちで満たされた。
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