溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
これって不法侵入だよね? 大丈夫なの? 入ったりして。

思わず周囲に人がいないかキョロキョロしていると、それほど高くない門を登り、彼は私に手を差し伸べた。

「大丈夫だよ、校舎内には入らないし。だからほら」

「でも……」

差し伸べられている大きな手を、そう易々と掴めそうにない。やっぱりまずいんじゃないかな、勝手に入ったりしたら。

グルグルと考えていると、佐々木君は痺れを切らした。

「逆にこうしているところを見られた方が、色々とまずいと思うけど」

うっ……たしかにそうだよね。現に佐々木君は校門によじ登っている状態だし、私はオドオドしているし。
こんなところを見られたら、本当に不審者だ。

「本当にただ入るだけだよね?」

「あぁ」

そう言うと佐々木君は再び「ん」と言いながら手を差し伸べる。

「……ありがとう」

戸惑いながらも彼の大きな手のひらに手を乗せると、ギュッと握られ軽々と身体を引き上げられた。

「わっ!?」

「大丈夫、ゆっくりでいいから」
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