溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
……ううん、しているよね。だって佐々木君、カッコイイもの。昔に比べてもっとカッコよくなった。

こんな彼を放っておくわけないよね。だから今、私と手を繋いでいても平気なんでしょ?

やだな、どうして卑屈になるんだろう。告白を断ったのは私なのに。

ずっと忘れられなかったから? 毎年桜が咲く季節がくると思い出していたから?

そもそもどうして佐々木君は十年前、あんなことを言ったの? それがすべてのはじまりだった。

きっと告白されただけだったら、こんなにも心の奥深くに彼が残ることはなかったはず。

告白してくれた思い出の人として、時々思い出すだけの存在だったと思うから。

色々な思いが渦巻く私の手を引き、彼が向かった先は校舎裏。そこは十年前、佐々木君に告白をされた場所だった。

「ここ……」

思わず声が漏れてしまうと彼は足を止め、私の手を離すと向かい合うように立つ。

月明かりの下、真っ直ぐ自分を見つめる切れ長の瞳に戸惑いを隠せない。
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