溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
だってもう十年も会わずにいたんだよ? それなのにずっと好きだったなんて、あり得ないと思う。

正直、私には彼に好かれる要素が思い当たらないし……。特別なにか優れているわけでも、容姿が良いわけでもないのに。

やっぱりからかわれているだけじゃないかなって思ってしまう。

その後、病院関係のイケメンを特集することで方向性をまとめ、打ち合わせを終えた。けれどそのあとも私は、少しでも仕事の手を休めると佐々木君のことばかり考えていた。


「今日は行かなくても大丈夫だよね」

定時を一時間過ぎて終えた。今から病院へ向かえばギリギリ面会時間に間に合う。

けれどおばあちゃんには、無理して毎日来ることないって昨日言われている。洗濯物も二~三日に一度取りに行けばいい。

病院にもランドリーはあるから、自分で洗濯してもいいって言っていたし……。

会社を後にし、駅に向かいながら言い訳の言葉を頭の中で繰り返す。

だって本当は毎日おばあちゃんの様子を見に行きたいと思っている。……でも病院へ行ったら、佐々木君に会う可能性がある。そう思うと行きづらい。
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