溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
思いがけない再会
最寄り駅から徒歩三分のところにある七階建てのビル。

その三階にある職場に通い始めてもう六年目になろうとしていた。

「それじゃ七月号の企画は、最新の浴衣コレクションと花火大会特集でいきたいと思います。よろしくお願いします」


定例の企画会議を終え、グンと背伸びしながらデスクへ戻っていく私、佐野環奈(さの かんな)二十八歳。

身長百六十三センチと女性としては高く、大きな二重瞼は猫目で、少しきつい印象を持たれがち。それと低い鼻がコンプレックス。

背中まである長い髪を仕事中はひとつに束ね、今日も気合いを入れて勤務に当たっていた。


大学を卒業後、私は毎月タウン情報誌を発刊している『株式会社 東葉』企画編集兼ライターとして入社。

総従業員数十名と少なく、アットホームな職場でタウン誌発刊までのすべての仕事を請け負っている。


企画発案からはじまり、有名人や店舗などへの取材依頼。実際に取材までこなし、フォトグラファー、外部ライター、デザイナーへの依頼、原稿ライティングや校正、進行管理まですべて自分たちで行なっている。
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