溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
「わかったよ、砂羽の気が済むまで好きなだけいていいよ」

ため息交じりに言うと、すぐにホッとした声が届く。

『本当? ありがとう環奈! やっぱり持つべきものは親友よね! あ、いたいた』

彼女の話の内容に首を捻る。

いたってどういうこと? それになんか電話越しが騒がしい。砂羽、もしかして今人混みの中にいる?

どこにいるか聞こうとした時、急に背中をポンと叩かれ肩をすくめた。

「キャッ!?」

驚き声を上げてすぐさま振り返ると、そこには耳元にスマホを当てた砂羽が立っていた。

「砂羽? どうしてここに……」

呆然とする私を見て砂羽はニッコリ笑い、電話を切った。

「いやー、環奈ん家行ったんだけど留守だったから、会社まで押しかけちゃおうかと思って来ちゃった」

可愛く舌を出しておどける彼女に、軽く目眩を起こしそうになる。

「来ちゃったって……。行き違いになっていたら、どうするのよ」

「まぁ、その時はその時だと思って。でもいいじゃない、こうして無事に会えたんだから」

あっけらかんと言う砂羽は、本当に昔から変わっていない。
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