溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
「心配して来てくれたのね、どうもありがとう。おかげさまでこの通り元気いっぱいよ」

いつも通りの明るいおばあちゃんの笑顔を見て、砂羽はやっと安心してくれたようだ。

「よかった、おばあちゃんが無事で」

「……だから言ったでしょ?」

ホッと胸を撫で下ろす砂羽の隣で、私は乱れた呼吸を整えるのがやっと。

体育会系の砂羽とは違い、あまり体力のない私では砂羽のペースについていくのがやっとだった。

砂羽は呼吸ひとつ乱れていないというのに、私は心拍が上がっているし、額には汗を掻いちゃっている。

春が近いといえど、汗掻くとか恥ずかしい。

手で顔を仰ぎながら火照った熱を取る。

「ふたりでこれから食事に行くの? 久しぶりじゃない? 砂羽ちゃんが結婚してからは、なかなか行けていなかったわよね?」

ふと尋ねられた質問に、砂羽の身体はギクリと反応した。そしてチラッと私を見た後、覚悟を決めたように大きく息を吐き、おばあちゃんと向き合った。

「あのね、おばあちゃん……実はお願いがあって」

「どうしたの?」
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