溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
チラッとおばあちゃんを見ると、不思議そうな顔をして「いってらっしゃい」と見送っている。

おばあちゃんに変に思われたよね。それなのに砂羽は私の背中を押してくる。

「いいから外に行こう。……おばあちゃんに聞かれたマズイ話でしょ?」

うっ……それもそうだ。なによりおばあちゃんに昔、佐々木君に告白されたことを知られるのは恥ずかしい。

そのまま砂羽とそそくさと病室を後にし、人気の少ないエレベーター前のロビーへと向かった。

そしてどういうことか説明してと詰め寄られた砂羽に、事の経緯を説明すると彼女は必死に声を押し殺して掠れた声で歓声を上げた。

「キャーやだ、佐々木ってばカッコいい! それになによ。約束の十年目を目前にして偶然出会っちゃうなんて。もしかして環奈と佐々木は、運命の赤い糸で結ばれているんじゃないの? いや、結ばれているでしょ! でなかったらこんなタイミングで出会わないから」

興奮状態で一方的に話す砂羽に、たじろいでしまう。

「環奈だって運命だって思ったんじゃないの? どうなのよ」

グッと顔を近づけて聞いてきた彼女。
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