溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
「男なんてね、簡単に気持ちを変える人ばかりなのよ? そんな中で佐々木は絶滅危惧種並みに珍しい男よ? 最初は優しくて理解力ある素振りを見せておいて、結婚したら手のひらを返す男だっているんだから!」

さっきまで佐々木君の話をしていたのに、いつの間にか変わっている。それを証明するように彼女の手の中になるビール缶が、メキメキと音を立てる。

ずっと砂羽のペースで聞けずにいたけれど、いったいどんな喧嘩をして家を飛び出してきたのだろうか。

今の話からすると、旦那さんとなにかあったのは間違いないと思うんだけど……。

気になり切り出した。

「ねぇ、家出の原因はなに?」

尋ねると砂羽の身体はあからさまにギクリと反応した。

そしてキュッと口を結んだ砂羽に、今度は私が畳み掛けていく。

「私は包み隠さず話したんだから、砂羽も話してよ。それに泊める以上は事情を聞かせてほしい」

あんなにラブラブだったのに、なにがあったの?

知りたくてジッと彼女の答えを待つ。すると砂羽は残っていたビールを一気に飲み干し、バツが悪そうにしながらも話してくれた。
< 64 / 279 >

この作品をシェア

pagetop