溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
「私ね、大好きな彼と結婚したら家庭に入って、仕事が大変な彼を支えたいって思っていたの」

「……うん」

砂羽は旦那さんと付き合い始めてすぐに結婚を夢見ていた。そんな彼女から会うたびに聞かされていた。もしプロポーズしたら迷いなく仕事を辞めて、家庭に入って彼を支えたって。

「でも理想と現実は違っていてさ。……最初の一ヵ月は毎日が幸せだった。朝起きてから寝るまでずっと、彼に尽くせる日々が。……でも朝送り出して、帰ってくるまでの時間、家事だけして過ごす毎日に疑問を持つようになった」

なんかわかるな。だって砂羽は入社してから、ずっと仕事が楽しいって言っていたから。

「だからね、思い切って相談してみたの。今までみたいにフルじゃなくていいから、働きに出たいって。……きっと彼なら私の気持ちを理解してくれると思ったの。でも実際は違った」

そう言うと砂羽は膝を抱え込んだ。

「働きに出るのを反対されて、その理由も話してくれなかった。ダメの一点張り。……なんか頑なな態度を見て、私は彼にとってなんなんだろうって思っちゃって。もちろん好きだよ? でも私は家事をするために彼と結婚したのかなって。疑問は膨れるばかりで、それが昨夜ついに爆発しちゃって喧嘩しちゃったわけ」
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