溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
舌を出して乾いた笑い声を上げる彼女に、胸がキュッと締めつけられた。

砂羽の気持ちがわかるから。私も砂羽のようにすごく好きな人と結婚できたら、彼を支えたいと思うと思う。

けれどその一方で今の仕事が楽しくて、辞めるなんてことは考えられない。

「不公平だと思わない? 女は結婚したら仕事を失って家のことだけして、いずれ母親になって子供の面倒も見てさ。……あれほど憧れていた結婚だったはずなのに、なんか辛くなっちゃって」

強がっていた砂羽も最後は言葉を震わせ、天を仰いだ。

そんな彼女を見ていられなくて、私は砂羽の身体をギュッと抱きしめた。

「いいよ、いつまでいてくれても。……なんならおばあちゃんと三人で暮らそうよ」

笑ってほしくて冗談交じりに言うと、砂羽は「アハハ」と声を上げて笑った。

「いいね、それ。久しぶりにおばあちゃんの手料理食べたいし、料理も教えてもらいたい」

「おばあちゃんも喜ぶと思う。張り切って砂羽に教えてくれると思うよ。……だから遠慮しないで、気が済むまでいつまでもいていいからね」
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