溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
え、やだなに? 会いたいなんて……! どうして私、そんなこと思ったの!?

自分が感じた気持ちなのに信じられなくて、立ち尽くしたまま茫然となる。

と、とにかく今日は早く帰ろう! 明日はいつもより早く出勤して、やらなくちゃいけない仕事を片づけないと。

そう自分に言い聞かせ歩き出したものの、再び足は止まる。

「え……嘘」

だって視線の先には、こちらを見て驚いている佐々木君の姿があったから。

「佐野……?」

お互い立ち止まり見つめ合ったまま、動けなくなる。

あれ、佐々木君帰ったんじゃなかったの? それなのにどうして?

混乱しながらも彼が出てきた先を見ると、そこは従業員通行口。もしかして今、仕事が終わったところだったのかな。すごい偶然。

今日は会えないと思っていたから、偶然でも会えて嬉しい。

「あ、あの佐々木君……あのね」

けれどすぐに我に返り、口を開いた。

そうだ、謝らないと。頭ではわかっているのに、いざ本人を目の前にして謝るとなると緊張する。
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