溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
何より佐々木君に声を掛けていた理由が理由だけに、後ろめたい気持ちになる。

「充実した高校生活を過ごしながら、俺はいつも佐野のことを目で追っていた。毎日ずっと」

意味深な言葉に胸がトクンと鳴る。

彼は私の方へ身体ごと向き、耳を塞ぎたくなるような甘い言葉を繰り出す。

「決して積極的な性格じゃないけれど、さり気ないところでリーダーシップが取れる子で、優しくて笑顔が可愛くて。ひとつひとつ小さな発見から大きな発見をするたびに、惹かれていったよ」

どうしよう。自分から聞いておきながら、実際に聞くと穴があったら入りたいほど恥ずかしくなり、どこを見たらいいのかわからなくなる。

「だから気づいたんだ。俺が佐野を目で追うように、佐野がいつも目で追っている相手のことが」

……それはきっと、先生のことだよね?

ゆっくりと彼を見ると、街灯に照らされた佐々木君の瞳は大きく揺れていた。

「大人で包容力があって、社会的地位があって。……俺にないものばかり持っている相手だった。それに加えて、俺のこともなにかと気に掛けてくれていてさ。先生には敵わないって思った。……佐野が好きになるのも、理解できた」

「佐々木君……」
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