溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
ずっと気になっていた彼の本音を知るたびに、胸がギュッと締めつけられていく。

そして向けられたのは、真っ直ぐで力強い眼差し。

「佐野が先生のことを本気で好きだって知っていた。でも俺も本気で佐野のことが好きだった。……全部が初めてだったんだ。誰かを好きになる気持ちを知ったのも、届かない想いに胸が苦しくなったのも」

それは私自身も経験した気持ちだった。

先生への想いは友達にも話せなくて、ずっと自分の心の中にとどめていた。そして先生に伝えることもできなかった。

「何度も佐野のことは諦めようと思った。振り向いてもらえないなら、好きでいても仕方ないって。……でもそれができなかったんだ。俺、どうしようもないほど昔から今もずっと佐野のことが好きだから」

ハニカミながら告げられた想いに心臓が鷲掴みされたように、ギューッと痛み出す。

これ以上、彼の話を聞いたらもっと苦しくなって耐え切れなくなるんじゃないかと思うほど。

それでも真っ直ぐ私を見つめる佐々木君の瞳から、目を逸らすことができない。

切れ長の瞳から、彼の真剣な気持ちが伝わってくるから。
< 94 / 279 >

この作品をシェア

pagetop