溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
ドクドクと普段より早い胸の鼓動が、彼に聞かれてしまいそうで怖い。それでも胸の高鳴りを鎮める術は今の私にはない。

まるで瞳に吸い寄せられるように、微動だにできないから。

「募る想いに自信があったんだ。……俺はこの先もずっと、佐野のことが好きだって。だから振られる覚悟で卒業式の日、告白をした。十年後、先生と対等な立場になった時に、もう一度気持ちを伝えようと。……大人になった俺を見て知って、好きになってほしかった」

初めて知る彼の真っ直ぐな想いに、言葉が出ない。

どうしてそこまで真っ直ぐでいられるの? だって私たち、もう十年も会っていなかった。お互い大学は別々に進学して、就いた仕事も全然違う。

そこで新しい出会いもあったはず。……それに――。

「十年たった今、私たちもう二十八歳だよ? ……私に恋人がいたり、結婚していたらどうしていたの?」

現に砂羽をはじめ、友人たちは次々と結婚している。中には子供がいる子だっている。

もしそうなっていたらどうしていたの? ……そんな未来を考えなかったの?
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