まずはお友達から〜目が覚めたらタイプの人に付き合って欲しいといわれました
それから彼は再び執筆活動に戻り、その作品を書き上げた。

私は読者第1号として読ませて頂き、あんなに泣いて怒った事もすっかり忘れて、大変満足していた。

“林田 空”、2年ぶりの新作は、今までの不思議な世界観とは異なり、主人公の成長する姿を中心とした正統派ヒューマンドラマと話題になり、テレビでも紹介される程となった。

ついにはあのデビュー作の記録も越え、どうやら映画化も視野に入れられているとか。

そういう訳で彼の担当編集部から、ずっと燻っていた先生を助けてくださったと大変感謝されてしまい、お言葉に甘えて何度か美味しいご飯も食べさせてもらっている。

でも少し待って欲しい。
私はただ酔っ払って彼に醜態を晒しただけなのだ。

それがどうしてあんな事になってこんな事になったというのか。全く不思議でしょうがない。

私は彼にその事を話すと、「事実は小説より奇なりって言うしねえ」と、例の朗らかな笑顔を浮かべながら言われた。

何だそれ、と思いつつ、もう飽きたからと戻してしまった柔らかい彼の黒髪に触れながら、私はこれからこの人とどんな物語を紡いでいくのだろうと、思いを馳せるのだった。


fin.
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