まずはお友達から〜目が覚めたらタイプの人に付き合って欲しいといわれました
どこにも逃げられない。
とにかく迷惑かけたことには変わりはないのだから、まずは謝らなければ。
ガチャリと音がした途端に、見切り発車で頭を下げる。
「ご、ごめんなさいーっ!!」
「わっびっくりした」
私の絶叫にも近い謝罪に対し、やけに落ち着いた声が重なる。
ゆっくり顔をあげると、やはり男の人がそこに立っていた。
ただパニック状態の私と違って、その人の表情はとても穏やかで、落ち着いている。
「起きてたんだ。おはよう。
今日土曜だけど。仕事は?」
「…休みです。(普通に会話が始まったぞ…)」
「良かった。
もう10:00回ってたから」
そう言いながら、その人はベッドサイドに腰掛けた。
シャワーでも浴びてきたのだろうか。
緩いTシャツとスウェットズボンの姿で、明るい色の柔らかそうな髪は少し湿っている。
(…え、てか普通にタイプなんだが。)
彼と目があった瞬間、さっきとは違う心臓の高鳴りを感じてしまった。
少し細めだが長身で、すっと通った鼻筋。
さすがにどんな相手と一夜をともにしたのかまで考えが及ばなかったが、普通にストライクな人が現れて、少し安心した自分がいた。
いやいやいや。
何考えてんだ私。
そういう問題じゃないでしょ。
一人であれこれ考えていると、その人はゆっくりとこちらに振り向いた。
「えーと。
昨日のことは、覚えてる?」
ハイ、キターーー
「えと…あの、その…本当にごめんなさい…お、覚えておりません…」
「全く?」
「はい…全く…」
「そうかー。まあそんな気はした」
薄情な返しにもかかわらず、その人は至って気に留めることもなく、再び前を向いてスマホを操作しだした。
こういう状況に慣れているのだろうか。
少しタレ目で優しい顔立ちのため、勝手に清純そうに見えたけど、いわゆるチャラ男というやつかもしれない。
いや、酔っ払っていたとはいえ男の人の部屋に上り込む私も人のこと言えたもんじゃないが。
「はい、これ。」
と目の前に出されたスマホ。一枚の写真が映し出されていて、私は言われるままその写真凝視する。
「げっ」
「思い出した?」
思いっきり酔っ払った上機嫌の私が、目の前のこの人と肩を組んで自撮りしている写真だった。
「やけに楽しそうだったから声かけたらめっちゃ絡まれて、何でか俺の携帯で自撮りしまくって、家に帰りたくないって言うから遠慮なく持ち帰らせてもらったよ」
「え!?じゃ、じゃあ私…やっぱりあなたと」
恐る恐る聞くと、彼がにこにこと無言で笑顔を返すだけ。思わずごくりと生唾を飲んだ。
「…そ、その…出来ました?私…」
「え、どういう事?」
「いや…あの…もうめっちゃ久しぶり…だった、というか…」
「…くく」
ついには肩を震わせて笑うものだから私はシーツを手繰り寄せて顔を隠した。
「ごめんごめん、してないよ。大丈夫」
「ほ、本当!?」
「うん。キスしようとしたら泣いたから、君」
「はい!?」
さらりと言われて目を開く。
「こんなイケメンと酒臭いままエッチしたくないって子どもみたいに泣いてたよ」
頭の中でチーンという音がした気がする。
見ず知らずの人に生き恥をさらしてしまった。いや、見ず知らずで助かったのかもしれない。
「…本当に、ごめんなさい。
ご迷惑をおかけして…もう、なんとお詫びしたらいいのか」
「ご迷惑、か。
確かにその後君はそんな事言ったくせに突然服を脱ぎ出して俺のベッドで勝手に寝ちゃって、何とかTシャツだけ着させてあげたけど。
あまり見ない様にはしたけど、脱いだのは君だからね?」
思わず体が固まる。
迷惑中の迷惑すぎてもはや通報されてもおかしくないレベルじゃないか。
冷たくなった手先を揃え、思い切り土下座する。
「あの!せめてタクシー代を」
「俺と付き合ってくれない?」
私と彼の言葉が重なる。
一瞬聞き逃しそうになったけれど、彼は確かに言った。
「…付き合う?」
「そう」
「…私と?何で?」
「何でって…どうして君に声をかけたと思う?」
「…どうして?」
「可愛かったから」
そう言ってにこりと微笑む彼に、私は思わず頬が熱くなる。いやいやいや。
「あなた…大丈夫?」
「何が?」
「いや、普通だったら」
「俺、普通じゃないんだよねえ」
「だよねえって…」
「子どもみたいに泣く君も可愛かった。
記憶なくて焦ってる君も可愛かった。
この出会いを無しにはしたくないと思った。じゃあもう付き合えばいいじゃんって思って」
確かに彼は普通じゃない。
今の所私は酔っ払って暴れて泣いて、ただ醜態さらしているだけな気がするんだが。
「だめかな。俺の事イケメンって言ってくれてたし、顔はタイプって思ってくれてるんだよね?」
やめてくれ。顔を近づけないで欲しい。
そのめちゃくちゃどタイプの顔に近付かれたら…。
「ま、まずはお友達から…」
やっとの声で何とか告げる。
いや、どのツラ下げて言ってるんだ私と思って恐る恐る彼を見ると、嬉しそうに微笑んでいた。
とにかく迷惑かけたことには変わりはないのだから、まずは謝らなければ。
ガチャリと音がした途端に、見切り発車で頭を下げる。
「ご、ごめんなさいーっ!!」
「わっびっくりした」
私の絶叫にも近い謝罪に対し、やけに落ち着いた声が重なる。
ゆっくり顔をあげると、やはり男の人がそこに立っていた。
ただパニック状態の私と違って、その人の表情はとても穏やかで、落ち着いている。
「起きてたんだ。おはよう。
今日土曜だけど。仕事は?」
「…休みです。(普通に会話が始まったぞ…)」
「良かった。
もう10:00回ってたから」
そう言いながら、その人はベッドサイドに腰掛けた。
シャワーでも浴びてきたのだろうか。
緩いTシャツとスウェットズボンの姿で、明るい色の柔らかそうな髪は少し湿っている。
(…え、てか普通にタイプなんだが。)
彼と目があった瞬間、さっきとは違う心臓の高鳴りを感じてしまった。
少し細めだが長身で、すっと通った鼻筋。
さすがにどんな相手と一夜をともにしたのかまで考えが及ばなかったが、普通にストライクな人が現れて、少し安心した自分がいた。
いやいやいや。
何考えてんだ私。
そういう問題じゃないでしょ。
一人であれこれ考えていると、その人はゆっくりとこちらに振り向いた。
「えーと。
昨日のことは、覚えてる?」
ハイ、キターーー
「えと…あの、その…本当にごめんなさい…お、覚えておりません…」
「全く?」
「はい…全く…」
「そうかー。まあそんな気はした」
薄情な返しにもかかわらず、その人は至って気に留めることもなく、再び前を向いてスマホを操作しだした。
こういう状況に慣れているのだろうか。
少しタレ目で優しい顔立ちのため、勝手に清純そうに見えたけど、いわゆるチャラ男というやつかもしれない。
いや、酔っ払っていたとはいえ男の人の部屋に上り込む私も人のこと言えたもんじゃないが。
「はい、これ。」
と目の前に出されたスマホ。一枚の写真が映し出されていて、私は言われるままその写真凝視する。
「げっ」
「思い出した?」
思いっきり酔っ払った上機嫌の私が、目の前のこの人と肩を組んで自撮りしている写真だった。
「やけに楽しそうだったから声かけたらめっちゃ絡まれて、何でか俺の携帯で自撮りしまくって、家に帰りたくないって言うから遠慮なく持ち帰らせてもらったよ」
「え!?じゃ、じゃあ私…やっぱりあなたと」
恐る恐る聞くと、彼がにこにこと無言で笑顔を返すだけ。思わずごくりと生唾を飲んだ。
「…そ、その…出来ました?私…」
「え、どういう事?」
「いや…あの…もうめっちゃ久しぶり…だった、というか…」
「…くく」
ついには肩を震わせて笑うものだから私はシーツを手繰り寄せて顔を隠した。
「ごめんごめん、してないよ。大丈夫」
「ほ、本当!?」
「うん。キスしようとしたら泣いたから、君」
「はい!?」
さらりと言われて目を開く。
「こんなイケメンと酒臭いままエッチしたくないって子どもみたいに泣いてたよ」
頭の中でチーンという音がした気がする。
見ず知らずの人に生き恥をさらしてしまった。いや、見ず知らずで助かったのかもしれない。
「…本当に、ごめんなさい。
ご迷惑をおかけして…もう、なんとお詫びしたらいいのか」
「ご迷惑、か。
確かにその後君はそんな事言ったくせに突然服を脱ぎ出して俺のベッドで勝手に寝ちゃって、何とかTシャツだけ着させてあげたけど。
あまり見ない様にはしたけど、脱いだのは君だからね?」
思わず体が固まる。
迷惑中の迷惑すぎてもはや通報されてもおかしくないレベルじゃないか。
冷たくなった手先を揃え、思い切り土下座する。
「あの!せめてタクシー代を」
「俺と付き合ってくれない?」
私と彼の言葉が重なる。
一瞬聞き逃しそうになったけれど、彼は確かに言った。
「…付き合う?」
「そう」
「…私と?何で?」
「何でって…どうして君に声をかけたと思う?」
「…どうして?」
「可愛かったから」
そう言ってにこりと微笑む彼に、私は思わず頬が熱くなる。いやいやいや。
「あなた…大丈夫?」
「何が?」
「いや、普通だったら」
「俺、普通じゃないんだよねえ」
「だよねえって…」
「子どもみたいに泣く君も可愛かった。
記憶なくて焦ってる君も可愛かった。
この出会いを無しにはしたくないと思った。じゃあもう付き合えばいいじゃんって思って」
確かに彼は普通じゃない。
今の所私は酔っ払って暴れて泣いて、ただ醜態さらしているだけな気がするんだが。
「だめかな。俺の事イケメンって言ってくれてたし、顔はタイプって思ってくれてるんだよね?」
やめてくれ。顔を近づけないで欲しい。
そのめちゃくちゃどタイプの顔に近付かれたら…。
「ま、まずはお友達から…」
やっとの声で何とか告げる。
いや、どのツラ下げて言ってるんだ私と思って恐る恐る彼を見ると、嬉しそうに微笑んでいた。