君が好きと言ってくれるなら、なんだっていい
「お前って、男友達とかいないタイプ?」


「うん。いままでほとんど話したこともない。塾の先生くらい」


「塾ってお前。それ、大学生とかだろ」


「そうだよ。家族以外の男の人なんてほんとに塾の先生としか話したことないよ」



昔から、あたしはまず友達というものが出来なかった。
小中と、最初は友達を作ろうと思ってるんだけど、気がつけばみんな誰かと仲良くなる。
そして、何人かでいることが苦手なあたしは結局ひとりだ。



「ふーん。じゃあ、俺が初めてってことだな。名前で呼んでみろよ」


「……っ」



家族以外の男の人を名前で呼ぶことなんかないから。
なんだかドキドキしてしまう。



「ほら」


「こ……こう」



浩一、そう言おうと思っても、うまく口が動かない。



「浩ちゃん……」



そうやって呼ぶだけで精一杯だった。

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