君が好きと言ってくれるなら、なんだっていい
「演技って……?」


「どーしようもないここの男に聞いてください。俺はそろそろ帰ります」



やれやれという感じで、大ちゃんはそのまま部屋を出ていく。



「あいつ、俺の演技が下手とでも言いてーのか?」


「……え?」



演技とか、演技じゃないとか。
そんなこと意味がわからなかった。

どれが演技でどれが演技じゃないのかも全然わからなかった。



「愛莉」


「……へ?」



突然呼ばれた名前に生返事になってしまう。



「これ、食べる?」



浩ちゃんがベッド脇にある引き出しから、ひとつの袋をだす。



「え?これ……」



浩ちゃんが手にしたものは、高校生の頃によく屋上でふたりで食べていたお菓子。

あたし達が初めて出会ったあの曲がり角のところにお店が立っていて、2人でよく買った。

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